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新井 敏郎

先制動物医療研究会 会長/日本獣医生命科学大学 獣医学部 獣医学科 教授

​演題/猫の肥満症 その発症メカニズムと対策

 2016年のWHOの報告では、世界の人口の40%弱が過体重~肥満と判定され、今や肥満は世界的な健康問題である。肥満は2型糖尿病、高血圧、心血管障害、ガンなど重篤な疾病のリスクファクターとなるので、その克服は人類にとって喫緊の課題である。犬や猫でも寿命の延伸に伴い肥満の発生は人同様に増加している。特に猫は、その独特な糖脂質代謝機構により、犬に比べより肥満しやすい動物と言え、適切な肥満対策が必要である。猫の肥満は健康障害(耐糖能異常、脂質代謝異常、糖尿病など)の有無により単純肥満simple obesityと肥満症obesity diseaseに分類できる。人医学では、肥満症は健康障害を有し医学的に減量が必要な状態と定義され、多くの場合、肥満症は炎症反応を伴う。また内臓脂肪蓄積の多少により、さらに分類が可能で、内臓脂肪蓄積が少なく炎症反応を伴わない場合を皮下脂肪型肥満症、内臓脂肪蓄積が顕著で炎症反応を伴う場合を内臓脂肪型肥満症に分類できる。内臓脂肪型肥満はメタボリックシンドロームへ移行する可能性が高い。皮下脂肪型、内臓脂肪型では現れる臨床症状、それに対する治療法も異なる。

 肥満症の抑制には早期診断、早期治療が効果的である。この実践のためにはゲノム、プロテオーム、メタボローム解析など用いた新たな診断マーカーの開発、その数値化が求められる。肥満症では血中のアディポネクチン濃度の低下、炎症マーカーとしてのserum amyloid A (SAA)濃度の増加が顕著で、アディポネクチン濃度、SAA濃度は肥満症の早期診断マーカーとしての重要性が今後さらに高まると考えられる。内臓脂肪蓄積を伴う場合は、脂肪組織、肝、腎などに脂肪変性を伴うことが多い(lipotoxicity)ので、活性酸素除去に効果的な抗炎症作用を有するサプリメントの投与が有効であることが明らかにされている。

 肥満を含む非感染性疾患の予防には、個の予防を徹底する先制医療の適用が効果的である。先制医療による肥満症の予防システム開発は、人と動物がともに健康で長生きできる社会の構築に貢献することが期待される。